外国人のための日本語講座(1)

日本語を勉強しておられる外国人の方々、こんにちは。ここでは、皆さんがとっさに使える日本語を勉強できるように、不定期に講座を開いていこうと思います。今日は記念すべき第一回目です。がんばって勉強しましょう。

まず、日本語を勉強する際に忘れてはいけないことがあります。それは、日本人がとかく婉曲な表現を好むということです。欧米人の中には単刀直入な表現を好む人たちがいますが、その感覚のまま日本人と話すと十中八九嫌がられることでしょう。日本語が日本人の使っている言語である以上、婉曲な言い回しを避けて通るわけにはいきません。ここでは、いくつかの例を挙げて日本語の理解を深めていきましょう。

婉曲な言い回しが必要な場面とは、往々にして何かを頼んだり断ったりするような、ちょっと困った場面です。今回は、あなたが上司から仕事を頼まれたとして、それを断ってみましょう。あなたは普段なんと答えているでしょうか。

「お断りします。」「やりません。」「できません。」
はい、これは最悪ですね。絶対に言ってはいけない言葉です。丑の刻参りという催し物にもれなく無断で参加させられる事でしょう。

「忙しいので…。」
まあまあの答えです。「忙しい」というのは、「おまえに使っている時間はない」という意味の婉曲表現です。便利な言葉なのですが「忙しい」という言葉自体を嫌っている人も多いので注意が必要です。

「来週で良ければやりますが。」
これは、「間違いなく来週まではやりません。来週以後やるかどうかは分かりません。」という意味です。頼まれた仕事の期限が分かっている場合、「期限後で良ければ」と言うことによって、断る意思を伝えることができます。頼まれた仕事の期限が分かっている場合には良いのですが、それ以外の場合に使うと「それで良いから」と押しつけられてしまうことがありますので、注意が必要です。まぁ、やるかやらないかは別問題ですので放置しておいても良いのですが。

「今抱えている仕事が終わってからでなら…。」
なかなか良い答えです。本当に今抱えている仕事があるかどうかは別問題です。とりあえず今を乗り切れば、その仕事は別の人に回される可能性が非常に高いです。そして、今抱えている仕事はずっと続けていることにしておきましょう。

「今抱えている仕事が遅れても良いなら…。」
前の答えと似たような答えですが、こちらは一転して駄目な答えです。ここまで「交換条件」という言葉が見え隠れするような断り方は嫌がられます。

「はい…。」
これが最も良い答えです。最近は、これで断っていることが伝わります。仕事をしているようにふるまいながら、「はい」を上の空もしくは面倒くさそうに答えて、その後の「…」の部分でちょっと困ったような考えるような忙しいような難しいような表情をうまく作り、さらに仕事をつづけるようにふるまってください。上司に十分なコミュニケーション能力が備わっていれば、あなたがその仕事をやらないという意思は正しく伝わります。万が一、意図が伝わっておらず、あとで仕事をしていないことをとがめられた場合は「ああ、そうでしたね」「頼まれましたっけ」「忘れていました」といった言葉を使えば簡単に乗り切ることができます。

日本語って難しいものですね。